
科学的根拠があり治療上有益であると判断された場合、患者さんやご家族の同意を得た上で、薬の適応外使用を行う場合があります。承認されていない使用法であるため、有効性・安全性について慎重に経過観察を行います。
・医学的必要性:承認された薬だけでは治療が難しい場合に、医師がより良い治療のために選択することがあります。
・有効性と安全性:承認された用法・用量ではないため、有効性や安全性が定まっていない場合があります。想定外の副作用が起こる可能性があります。
・副作用救済制度:適応外使用によって生じた副作用は、原則として国の「医薬品副作用救済制度」の対象外となります。
・抗精神病薬
統合失調症の治療薬として開発された薬ですが、せん妄、認知症の周辺症状、強迫性障害、外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療に使用されることがあります。
・抗うつ薬
不眠症や不安障害の治療に使われることがあります。
・抗てんかん薬
双極性障害の気分安定化や衝動性の抑制に使われることがあります。
児童精神科領域の薬物治療は、成人に準じて処方されることが多いのですが、成人と児童思春期では薬剤の効果や副作用が違うことが次第に明らかとなっています。よって未成年の場合効果などが不明といった記載が添付文書にされていることも多くなっています。ただし、効果がないという証明がされた薬剤は少なく、効果が疑問視された薬剤もケースによっては効果が見られたり、論文で効果が報告されたりしています。
当院では、それら適応外処方とされる薬剤の投与について、効果とリスクを勘案して使用しています。
一般的には薬物投与によって転倒、過鎮静、歩行障害、嚥下障害、構音障害、震戦などの副作用の出現や、死亡リスクの上昇の可能性があるものの、緊急性が高い場合や、非薬物的介入(適切なケア、リハビリテーション)を行ってもなお症状が十分に改善しない際には薬物療法を考慮してもよいとされています。
当院では、そのような適応外処方とされる薬剤の投与も効果とリスクを勘案して使用しています。